今回のテーマは「連作障害」です。
我が家は大きな畑があるワケではなく家庭菜園レベルです。
家庭菜園の場合、スペースが限られているので輪作年限を意識して畝をたてていくのがかなり難しいですね。
夏野菜はナス科とウリ科ばっかりですし、ナス科とウリ科をめいっぱい栽培してしまったら翌年からはどうしたらいいの…?というのが正直な感想です。
ということで今回は家庭菜園のような限られたスペースで野菜を育てていくためには避けては通れない連作障害について掘り下げていきます。
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連作障害が起こる理由
連作に起因する何らかの理由(主として土壌に関係する理由)により、次第に生育不良となっていく現象を、連作障害という。連作障害のことを忌地、嫌地、厭地、いや地(いずれも読みは「いやち」)ともいう。
野菜や果樹などの収益性の高い部門への選択的拡大が進み、麦類や雑穀といった普通作物の生産は衰退していく一方で専作傾向が進み、生産伝統的な輪作体系はほぼ完全に崩壊し、特定の作物の連作が一般化した。その結果、連作障害が激化し、作物の安定生産を妨げる要因となっている。連作障害の原因は土壌伝染性病害が非常に高い割合を占めているのに対して、土壌の化学性や物理性に関する原因の占める割合は低く、連作障害問題は土壌伝染性病害問題とも言える。
困ったときはWikipediaに聞いてみるとだいたいのことはわかります。
連作障害は土壌伝染性病害と考えられていて、同じ作物を選択的に育てることによって土壌の状態が育てている作物に特化した状態になります。
特化といえば聞こえはいいですが、同じ作物がずっと育てられているのであればその作物を好む病害虫もどんどん集まってくることになります。
ここでいう病害虫というのはなにも目に見える昆虫類のことだけではなく、土の中に住む微生物の類のことをいいます。
簡単にまとめると特定の作物だけを栽培していると土壌の状態に偏りが生まれることが連作障害の原因と考えられています。
漠然と知っているだけでしっかりとは理解していなかった連作障害について、こちらのJAの記事を読むとスッと入ってきましたよ。
【現場で役立つ農薬の基礎知識2019】連作障害対策に有効活用を

自然界で連作障害が起きにくい理由
自然界という言葉を使うと壮大すぎてピンボケしてしまいますが、近くの堤防の光景を思い浮かべてください。
毎年同じような植物が同じような時期に育っていますね。
シロツメクサやカラスノエンドウなどがたくさん育っていたりしますが、この2つはマメ科の植物です。
マメ科の野菜は枝豆、スナップエンドウなどがありますが、いずれも連作障害を気にする必要がある作物です。
じゃあ雑草であるシロツメクサやカラスノエンドウと野菜として育てる枝豆やスナップエンドウとの違いは何なんでしょうか?
- 畝の周りには他の雑草が生えてなくて枝豆・スナップエンドウしか生えていない
- 収穫量を増やすために肥料を入れたり工夫している
こんなところですかね?
枝豆やスナップエンドウは育てているわけですが、シロツメクサやカラスノエンドウは勝手に育っているという違いがあります。
当然、勝手に育っているのだから周りには他の雑草も生えている。
収穫するための肥料があるワケでもないから他の雑草よりも目立って成長するほどのことはない。
つまるところ、自然界は育てないから連作障害が起きにくく、育てるから連作障害が起きるとも考えられますね。
育てるから土壌のバランスが崩れて病害虫の繁殖が進んで土壌が汚染されてしまい、結果として連作障害の原因となってしまう。
意外とこの考え方はしっくりきます。
自然界ではありえない育ち方をするんだから土壌のバランスも崩れて当然ですよね。
自然農法や有機栽培でも連作障害は起こりえる
自然界で連作障害が少ないのは植物を育てているんじゃなくて勝手に育っているからだとすれば、より自然界に近い方法で野菜を栽培すれば連作障害は起こらなくなるような気がしますね。
より自然界に近い栽培方法というと、
- 自然農法
- 有機栽培
- 無農薬栽培
などになってきます。
無農薬栽培は農薬を使わないだけで慣行農法、つまりよく見る野菜畑の育て方と大きく変わらないので連作障害は起きやすい。
化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業
有機栽培は化成肥料と農薬を使用しない栽培方法で、使うのは堆肥や鶏糞・油かすなどに限定されます。
化成肥料を使わないのがポイントですね。
より自然に近い環境で栽培しているため、土壌中の微生物は多く慣行農法の土壌に比べるとバランスの取れた状態になっていると考えられます。
連作障害の原因が病害虫による土壌汚染であることを考えれば土壌のバランスがとれていることはよいことですね。
有機栽培はマルチングもありえますし、除草もするので見た目としては慣行農法=よく見る畑の状態と大きく変わることはないでしょう。
農薬や人糞肥料・化学肥料を⼀切使⽤せずに、枯れ草や藁などで堆肥を作って⽥畑に還元し、⾃然界の⼟壌と同じ⽣命⼒溢れる⼟を作り出し、⾃然の仕組みを上⼿に再現した農産物⽣産⽅法。不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使用しない)。
そして、より自然界に近い状態になるのが自然農法です。
これは正直聞いたこともない方がほとんどなんじゃないかと思います。
後半部分の不耕起・不除草・不施肥・不農薬については福岡正信という方が提唱していますが、自然農法を行う上でのMustではない=必要条件ではないようです。
極論は草が生えているところに野菜の種をまいて育てるイメージのようですが、さすがに簡単にうまくいく農法には思えません。
あと、鶏糞などの動物糞由来の肥料に関してはギリギリセーフと考えられなくはないようです。
曖昧な表現になりますが、私もその道のスペシャリストではないので断言はできませんが。
これは我が家の畑のピーマンの様子。
株元は草ボーボーですが、周辺の草を刈り取って畝の上にかぶせる草マルチをしています。
無農薬ですが肥料として鶏糞を使っていますし完璧な不除草ではありません。
それでもかなり自然農法に近い形で育てているんじゃないかな?と思っています。
畝で育てる野菜が限定されるなら連作障害は避けて通れない
かなり自然農法に近い形で栽培している我が家の家庭菜園ですが、上のピーマンの畝のような状態であれば連作障害のリスクは確実に残っていると思います。
周りは雑草もたくさん生えていて自然な状態に近くはありますが、畝のど真ん中でピーマンだけが立派に育っていますね。
つまり、土壌はピーマン好みに傾いているはず。
この時点でピーマン好みな病害虫も少なからずよってきているはずなので、来年もナス科の野菜を同じ畝に植えてしまうと連作障害の症状がモロに出てしまう可能性は高いんじゃないかな、と思います。
この畑が自然界なら、ピーマン以外の植物もワッサワッサと茂っていて、ピーマンはここまで立派には育つことができいなかったんじゃないでしょうか?
慣行農法で農薬・化成肥料をバリバリ与えているのに比べれば連作障害のリスクは低くなっているんでしょうが、それは程度問題の範囲であって自然農法でも有機栽培でも特定の野菜を育てているのであれば連作障害のリスクは排除できないと考えるのがベターかな。
接ぎ木苗のリスク
連作障害対策の定番は接ぎ木苗ですね。
台木は連作に耐性のあるものが選ばれるので、苗を深植えしたりして穂木=育てたい野菜の方から根が出たりしなければ本来の目的通り連作障害が出にくくなるので重宝します。
重宝はするのですが、連作障害に強い=病害虫への感受性が低いというだけなので、連作により土壌環境は悪化の一途をたどっていると考えていいんじゃないでしょうか?
WEB検索をかけても接ぎ木苗は連作障害に強いという情報が出てくるばかりで、デメリットは苗の価格が高いことくらいしか書かれていません。
なのでこれは私の個人的な感想でしかありませんが、連作障害の対策として接ぎ木苗を選ぶだけでは次第に良い野菜が取れなくなっていくんじゃないかな、と思います。
何年も繰り返し、繰り返し育てているとそのしわ寄せがくるように思えてなりません。
輪作と土壌環境を整えて連作障害を乗り切る
連作障害の被害を最小限に抑えるためには輪作して同じ科の野菜を数年単位でローテーションしながら栽培するしかありません。
上の写真はきゅうりを育てていた畝ですが、来年はウリ科を植えずに別の科を植えなければなりません。
うちの家庭菜園は比較的広いスペースなので輪作しようと思えば可能ですが、それでもこれくらいの収穫量が欲しいな、と思って計画してみると1~2年の輪作が限界です。
輪作は輪作年限が3~4年の野菜が多いこともあり、たいていは菜園スペースを4分割に区切って計画します。
- トマト
- なす
- じゃがいも
- きゅうり
- 枝豆
- スナップエンドウ
このあたりは毎年植えていきたいのですが、どうしてもナス科に偏りがちです。
ウリ科はそんなに多くないからきゅうりはなんとかなりそうだし、マメ科はそんなに広い面積がいらないからこちらもなんとかなりそう。
でもナス科が多すぎるんですね…畑を4分割したってとてもじゃないけど回せない。
畑の半分くらいはナス科が占めてしまうことになるので1年おきが限界です。
夏野菜=ナス科といっても過言ではないのに連作障害は顕著にでる野菜なのでとにかく困りものです…
このため、十分な輪作間隔をキープするのは困難なので連作障害が起こりにくい土壌をつくっていくことも同時進行で進める必要があります。
これはどこの家庭菜園でも同じだと思いますね。
最終手段として太陽熱消毒をおこなう
連作障害の原因は特定の野菜を連続的に栽培することによって、その野菜を好む土壌中の病害虫が増えることにより起こります。
有機物をたくさんいれて土壌環境をよく保つことも連作障害の対策にはなりますが、これは土壌中に特定の病害虫が増えることを妨げているだけです。
スペースの限られた家庭菜園で毎年ナス科の野菜を育てていれば、どんなにがんばっても連作障害がひどくなっていくこともあり得ます。
そんなときの最終手段が太陽熱消毒です。
太陽熱消毒のやり方
- 畝をつくる
- しっかりと潅水する
- マルチングして2~3週間ほど放置する
太陽熱消毒はマルチングした畝の中を蒸し風呂のような状態にして病害虫・雑草の種を殺菌消毒することをいいます。
雑草が生えないように黒マルチをする方もいると思いますが、マルチングと太陽熱消毒の違いは水分量です。
田んぼに水を張るくらいのレベルでしっかり潅水して蒸し風呂を作ることがポイント。
ただし、太陽熱消毒では土壌にとってプラスに働く微生物も殺菌消毒してしまうことになります。
時間をかけて作ってきた土壌環境をリセットすることになるのであくまでも太陽熱消毒は最終手段と考えてくださいね。
連作障害を理解して対策していこう
今回は連作障害について掘り下げてみました。
私のこれまでの連作障害のイメージは、たとえばトマトばかり育てているとトマトに必要な栄養分を過剰に使ってしまうので徐々に育たなくなってくるようなものでした。
実際は同じ野菜を連続して栽培することで、栽培している野菜を好む病害虫がどんどん集まってくることが原因となっていることがわかりました。
これを知っているのと知らないのでは連作障害に対する備えが全然かわってきます。
- 輪作して数年周期で栽培する
- 有機物をたくさん入れて微生物を増やす
- たくさんの種類の野菜を一緒に育てて土壌環境の偏りをなくす
- 最終手段として太陽熱消毒をして土壌環境をリセットする
こういったことを意識しながら栽培することで狭い家庭菜園のスペースでも連絡障害が起きにくい環境を作っていくことが可能です。
私の場合は可能な限り輪作しつつ、1種類だけを栽培する畝を作るのではなく何種類かの野菜を一緒に育てることで土壌環境の偏りに配慮しています。
周りに生える雑草は刈り取って畝の上に草マルチとしておくことで少しでも有機物を補おうと対策中。
どれくらい効果があるのかを定量的に実感することはできないと思いますが、やらないよりはやった方が連作障害が起きにくいのは確かだと思います。
スペースが広くないからこそ手をかけることができるのも家庭菜園の強みですので、ぜひ参考にしてみてください。
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