自家採取をはじめて3年ほど経過して、アブラナ科野菜も含めて家庭菜園で自家採取できそうな野菜は1周しました。
自家採取自体は特別に難しくはないのですが、野菜の種類によってはせっかく種が熟すまでじっくりと栽培したのに、いざ育ててみるとさっぱり違う見た目の野菜ができてしまうこともあります。
アブラナ科がそんな野菜の代表例ですね。
ただ、すべての野菜で自家採取がおすすめできないかというとそうではなく、自家採取した種からでも味も見た目も十分受け継がれた野菜を栽培できるものもあります。
ということで今回は実際に栽培してみてわかった自家採取した方がいい野菜としない方がいい野菜について紹介します。
自家採取の難易度は低いのでやろうと思えば簡単にできる
昨年1年間で種取りした野菜はこちらになります。上の写真は人参の種です。
- アブラナ科:ハクサイ/小松菜/チンゲンサイ/水菜
- ヒユ科:ホウレンソウ
- セリ科:人参/セロリ
- ナス科:ナス/トマト/ピーマン
- ウリ科:きゅうり
- アオイ科:オクラ
1度種取りをするとかなりの量が取れるものもあれば、ちょっとしか取れないものもあります。
アブラナ科やセリ科はかなり大量の種が取れますね。
夏野菜は主に身を食べる果菜類が多いですが、完熟した果実を食べるトマトやスイカ、メロンなどは自家採取しなくても購入した野菜の種を使って育てることも可能です。
種取りの方法は簡単で、花が咲くまでじっくりと栽培してあげればOK。
ホウレンソウは雄株と雌株があるので種取りするなら少し株数を多めに栽培しておく方がいいですが、それ以外の野菜については花が咲いて種が充実するまで待つだけです。
種を採取すること自体は難しくはありません。
F1種から種取りしてF2種になると同じ野菜が収穫できるとは限らないリスクがある
野菜の種には固定種とF1種の2種類があります。
雑種第一代
雑種第一代(ざっしゅだいいちだい、英語: F1 hybrid; Filial 1 hybrid)とは、生物において、異なる2つの系統の交配により生まれた第一世代目の子孫を指す。
一般には、F1品種の農作物は、その一世代に限って安定して一定の収量が得られる品種として知られ、多くの種苗会社が力を入れる分野となっている。
日本で流通している野菜の種の8 – 9割は、世界で採取され輸入されている。
在来種
農業分野では、ある地域で伝統的に栽培され、遺伝子操作などの現代的な品種改良を行っていない作物を指すことがある。F1品種や栽培品種(園芸品種)の対義語として用いられる。 たとえば西川芳昭は、「ある地方で古くから栽培され、風土に適応してきた系統、品種。その地域ではよくても他の地方では育ちにくい品種もある。すべて固定種と考えてよい。品種特有の個性的な風味を持つ」と説明している。固定種とは、「何世代もかけて選抜、淘汰されてきた遺伝的に安定した品種」を指す。
ホームセンターで購入できる種のほとんどはF1種と呼ばれる、異なる2つ性質を持つ親をかけあわせた雑種の1世代目となります。
成長が早いものと病気になりにくいものをかけあわせるようなイメージですね。
一方で、固定種はそういった性質のかけあわせをしなくても遺伝的に安定したものをいいます。
先ほどもお伝えした通り、種取りそのものはあまり難しくないのですが、ほとんどの種はF1種でありF2種(F1種の第2世代)になると親の性質とは異なる野菜ができてしまう可能性が高くなります。
ここはしっかりと覚えたうえで自家採取するようにしましょう。
自家採取するかどうかのポイント
自家採取するうえでポイントとなるのは、
- 親の性質を引き継ぎやすいかどうか
- 同じ科の野菜同士で交雑するかどうか
の2つになります。
ただ、これだけの情報だと初めて種取りする方にとってはさっぱりだと思いますので、ちょっといいかえてみます。
- 自家受粉する野菜かどうか
- 交雑しても食べやすいかどうか
これだとだいぶわかりやすいかな、と思います。
自家受粉する場合、ある意味自分のクローンを作っているのと同じ状態なので種からも似たような性質の野菜ができやすいです。
F1種だとF2になった時点で75%の確率でF1種と同じ性質を持ち、25%の確率で異なる性質となります。
これはメンデルの第二法則と呼ばれるもので、実験測からなるのでそういうものだと覚えておいてください。
F2種から育てた野菜がF1種と全く同じじゃないといけないかというと、家庭菜園レベルだとだいたい似ていればOKとなるはずです。
そう考えると自家採取して育てていきやすい野菜とそうでない野菜がわかりやすくなりますよ。
自家採取おすすめの野菜
- ナス・トマト・ピーマンなどのナス科野菜 → 自家受粉
- きゅうり → 他家受粉だけど性質は安定しやすい
- 人参 → 他家受粉だけど性質は安定しやすい
- オクラ → 自家受粉
- スナップエンドウ・エダマメなどマメ科野菜 → 自家受粉
- チンゲンサイ・小松菜 → 他家受粉だけど葉を食べるだけなので問題なし
- 大根 → 他家受粉かつアブラナ科だけど大根以外と葉交雑しにくい
自家採取おすすめの野菜は上記のとおり。
これまでの自家採取の経験もふまえて、F2種・F3種となっても問題なく栽培していける野菜です。
自家受粉の野菜の場合はF1種であっても交雑しないので性質が安定しやすい印象を持っています。
F1種のトマトから種を取ったとしても、F2種として栽培したトマトはやっぱりトマトで、多少の生育の良し悪し、形・味の変化がある程度です。
そういう意味ではとりあえずトマトは食べられるので自家採取した種から栽培していっても公開することは少ないですね。
逆にチンゲンサイや小松菜の種取りをした場合、見た目は結構違う野菜になってしまう可能性は高いです。
家庭菜園をはじめるまではあまり意識したことなかったのですが、アブラナ科っていろんなところにあります。
河川沿いの堤防なんかは春先は黄色い花で満開になりますが、これはアブラナ科の花なので同じアブラナ科であるチンゲンサイや小松菜とは交雑してしまう可能性があります。
ただ、仮に交雑してしまったとしても食べることはできるし、葉物野菜は茹でたり炒めたりして食べるので大きな問題になることがありません。
このため、チンゲンサイや小松菜に関しては少し見た目の違う野菜になってしまう可能性が高いけれど食べられるからOKという程度であることは覚えておいてください。
自家採取しない方がいい野菜
- ハクサイ・水菜 → アブラナ科で特徴のある形をししなくてよい
- モロヘイヤ → 種には毒性があるので、無理して種取りしなくてよい
自家採取しない方がいい野菜はF1種からF2種に変わるタイミングでガラッと性質が変わりやすい野菜になります。
夏野菜・秋野菜の種取りをいろいろとやってきましたが、私個人の感想としては自家採取しない方がいい野菜はハクサイ・水菜くらいになります。
こちらは水菜から種取りしたF2種の水菜です。
葉の形は水菜っぽさを残していますが、サイズ感が完全に水菜ではありません。
全体を見るとこのような感じです。
ほかのアブラナ科と交雑しただけなので食べられないことはないのですが、水菜のシャキシャキ感を求めて栽培していたので期待外れでした。
かなりの大株に育ったので1つあれば十分すぎるほどの収穫量となりますが、水菜ではないので今年は栽培しないと思います。
次がハクサイですが、こちらは1月に入って撮影したものです。
ハクサイらしい見た目をしていますが、多少は植え付け時期が遅れてしまったことはマイナスポイントですが、明らかに結球が遅くなかなか収穫することができませんでした。
結球してきたな、と思ったらトウが立っているものもあったのでこれが限界だったのかもしれません。
たぶん小松菜あたりと交雑して結球する性質が弱くなってしまったことが原因と考えられます。
やはりぎゅっと葉が密に詰まっているのがハクサイだと思うので、いくら問題なく食べられても咲く際みたいな葉っぱを食べているだけでは満足感がありませんでした。
こちらも今年は栽培せずにちゃんと種を買ってから育てることになりそうです。
最後はモロヘイヤですが、モロヘイヤの種にはストロファンチジンと呼ばれる強心作用のある毒が含まれています。
花が咲き始めるころまでは問題なく収穫して食べることができますが、種取りしようとしてついうっかりバラまいてしまった、飲み込んでしまった…などがないわけではありません。
野生動物が食べてうっかり…なんてことも考えられますね。
私の場合はリスクのあるものをあえて種取りする必要もないと考えていますので、モロヘイヤの自家採取はやっていません。
野菜の特徴を覚えて自家採取してみよう
今回は実際に栽培してみてわかった自家採取した方がいい野菜としない方がいい野菜について紹介しました。
とりあえず種が取れそうならなんでも取って、購入した種が残っていても自分で種取りした種を優先的に使って育てていましたが、なんでもかんでも種取りすればいいというわけではないことがわかりました。
とりあえず、アブラナ科で特徴的な形をしているもの、たとえばハクサイや水菜などについては交雑してしまうとすっかり見た目が変わってしまうため種取りはおすすめしません。
アブラナ科のように同じ科の多い野菜でなければ少々交雑しても見た目は変わりにくいです。
自家受粉の野菜であればほぼ100%種取りしても満足できる野菜が育てられると思います。
みなさんもぜひ試してみてください。
自家採取した水菜が交雑していたけど、見た目や味はどうかわった?
コメント